新しくアダストリアグループとなった株式会社ゼットン。ハワイアンカフェ「アロハテーブル」をはじめ、ダイニング事業、ブライダル事業、公園施設の再開発など、多様なビジネスを展開しています。アダストリア社長の木村治と、ゼットン社長の鈴木伸典が、今回パートナーとしてタッグを組むに至った経緯、顧客のライフスタイルの変化やファッション業界・飲食業界の未来について想いを語ります。
グッドコミュニティをつくりたい。
そのためにも「食」の成長が不可欠。
木村:ゼットンは1995年に名古屋で創業した企業。そして鈴木社長は、岐阜県出身なんですよね。
鈴木:岐阜にある被服工場の3代目として生まれました。小さい頃はずっと「自分もいずれ洋服に関する仕事をするのだろう」と考えていたので、今こうしてアダストリアのグループになったことに、不思議な縁を感じています。
木村:今回、アダストリアは「食」の領域をさらに広げるためゼットンをグループに迎えました。ぜひ、ゼットンについて鈴木社長より改めてご紹介いただけますか。
鈴木:ありがとうございます。ゼットンは名古屋で「ZETTON」1号店を出店した後、フレンチレストランやハワイアンカフェ、立ち飲みBar、蕎麦居酒屋など、さまざまな店づくりをおこなってきました。東京都内で立ち飲みブームを巻き起こしたのも、「名古屋メシ」という言葉を生み出したのも、実は私達なんです。他にも、ブライダル事業やアウトドア事業の展開、そして直近ではサステナブル戦略をベースとした公園再生プロジェクトという新たなビジネスモデルにもチャレンジしています。
木村:「食」をベースに、実に多様な展開をしていますね。
鈴木:そうですね。私達は創業以来「店づくりは、人づくり。店づくりは、街づくり。」を理念に掲げていまして、店づくりを通じて人と人との関わりや街のコミュニティスペースを生み出してきました。
木村:ゼットンの理念は、アダストリアの企業姿勢と非常に似ていると感じますね。アダストリアは「Play fashion!」をミッションに掲げ、アパレルだけでなくライフスタイル全般に関わる事業を展開しています。さらなる成長のために実現したいのは、人々が集い豊かな時間を共有する「グッドコミュニティ」の創出です。
鈴木:その言葉通り、アダストリアは人々が楽しめる、ワクワクできるコミュニティが事業によって創り出されていると感じています。
木村:私は、アダストリアの成長には「食」の分野での拡大が不可欠だと考えてきました。既にカフェなどの飲食事業は手がけていますが、そこにゼットンという心強い仲間が加わることで新たなシナジーが生み出せると期待しています。
鈴木:木村社長をはじめ、アダストリアのみなさんは「アダストリアって昔はアパレル企業だったと言われたい」と仰っているじゃないですか。まさに私達も同じで。「ゼットンって飲食の会社なんだよね」ではなく「ゼットンって飲食から始まった会社なんだね」と言われたいんです。私達がお互いに次のステージへと成長するためにも、それぞれの力が不可欠だったのかなと思います。
木村:そうですね。経営理念を通じた考え方、実際に取り組まれている事業内容など、シンパシーを感じています。
大きく変化した私達の生活。
2社が見据える、これからのニーズ。
木村:コロナ禍の影響で、消費者の生活様式や価値観は大きく変化しました。ファッション業界で言えば、ECでの商品購入の割合が増え、SNSを通じてオンライン上でお客さまと直接つながるなど、「物の買い方」だけでなく「顧客接点の形」「コミュニケーションの在り方」が大きく変わったと感じています。鈴木社長は、どのような変化を感じていますか?
鈴木:これまでの飲食業界は、接待や宴会などビジネスシーンでの利用が売上げの大半を占めていたお店も多くありました。しかし、現在はより親密な関係である家族や友人同士など、プライベートシーンでの利用が増えてきていますね。我々の手掛けてきたお店は、元々女性同士でお誕生日をお祝いしたり、大切な人と記念日を楽しむシーンなどで利用されたりすることが多かったので、度重なる営業の停止や短縮を経ても、比較的早い回復ができたと感じています。
木村:人々のライフスタイルに寄り添った事業を既に展開していたからこその回復スピードだったというわけですね。私は個人的に、コロナ禍の終焉後、社会が完全に元の状態に戻ることはないと予測しています。ECでの購買やフードデリバリーの利用、リモートワークの活用がここまで普及した今、この流れはますます加速していくでしょう。でも、以前のニーズがゼロになるということも絶対にないはず。どれだけ便利なデリバリーサービスができても、お店にみんなで集まっておいしいものが食べたいという欲求はなくならないでしょうし、ECで服や小物が自由に買えたとしても、接客を受けながら買い物をしたい人は必ずいるはずなんです。それは、生活の彩りであり、ワクワクする時間であり、アダストリアがこれまでずっとお客さまへ届けてきた価値です。
鈴木:私も同じように感じますね。飲食業界の売上げは今後間違いなく回復します。しかし、誰と食べるのか、どこで食べるのか、何を食べるのかといった、お金の使い方は大きく変わってくると予想しています。
アダストリアとゼットン。
それぞれのコンテンツをどう活かすか。
鈴木:近年、ゼットンは公園再生プロジェクトに精力的に取り組んでいます。その一例が、東京都内の葛西臨海公園。古いカフェ施設をキッズスペースのあるカフェに改装してファミリー層が安心して過ごせる場としてリノベーションし、緑豊かなロケーションを活かしたバーベキュー施設を新設したところ、人々の過ごし方が多様になり、平日も休日も人で賑わう公園へと生まれ変わりました。
木村:私も遊びに行きましたが、家族連れや友達同士のグループですごく賑わっていますよね。
鈴木:そうなんです。連日たくさんの方が遊びに来てくれていますね。私はこうした公園再生プロジェクトでも、アダストリアの力を活かせるのではないかと考えています。例えば、公園やバーベキュー場はアウトドアのニーズが生まれやすい場所。食べ物や飲み物はもちろん、快適に使える椅子やテーブルが欲しくなったり、雨が降ったらテントやレイングッズも必要になったりしますよね。ECを通じて、その場でアダストリアのアウトドアグッズをレンタルや購入できれば、すごくいいアライアンスになると思うんです。
木村:「niko and ...(ニコアンド)」などはアウトドアグッズが人気ですし、ぜひ、それぞれが持つ強みをうまく合致させたいですね。アダストリアグループのWEBストア「.st(ドットエスティ)」は会員数1,300万人以上を誇る大きなコンテンツですが、ここにゼットンの飲食メニューを販売するのもいいなと考えています。「自宅で簡単にアロハテーブルのロコモコが食べられる」「アロハテーブルで使われていた食器が自宅で使える」となると、それもまた面白そうですよね。
鈴木:いいですね。アロハテーブルのロコモコはハワイ州観光局公認プログラム「111-HAWAII AWARD(ワン・ワン・ワン ハワイアワード)」ロコモコ部門で3回連続グランプリを獲得して殿堂入りした人気メニュー。現在は店舗でしかご提供していませんが、「ドットエスティ」を活かせば他にもいろいろな挑戦ができるでしょうね。
※ハワイ州観光局公認プログラム「111-HAWAII AWARD」とは、ハワイのグルメ、お土産、ツアーなど、40カテゴリーから、全てのハワイファンによるオンライン投票で、それぞれのランキングを決定しています。
海外での成功ノウハウを、
活かし合いながら成長を目指す。
木村:海外展開という点においても、大きなシナジーが生み出せると考えています。アダストリアは台湾や上海、アメリカなど、さまざまな地域に拠点があるのが強み。そしてゼットンは、ハワイのホノルルにアロハテーブルの旗艦店をはじめ、様々な業態があるので、 両社の条件を組み合わせれば、海外展開の可能性も広がると思います。
鈴木:アダストリアは上海にニコアンドの旗艦店をオープンして人気店へ成長させるなど、大きな成果を出されていますよね。
鈴木:ハワイのアロハテーブルは2009年に生まれ、現地でブレイクしたタイミングで日本での店舗展開をスタートしています。日本の外食産業の多くは海外で話題のレストランやブランドを日本に持ち込んでいることが多いです。私達は、アメリカで自社でブレイクさせたものを日本に持ちこむという、真逆の流れでの成功体験を持っています。アダストリアとグループになれた今、こうしたノウハウも活かしつつ、新たな海外展開を進めたいと考えています。
木村:アダストリアも、海外事業を現在の規模に広げるまでに何度もトライ&エラーを続けてきました。私達は、挑戦と失敗を恐れずに変化できる企業です。私はアダストリアがまだ福田屋洋服店だった頃に入社し、この会社が「変わる瞬間」をずっと体験し続けてきました。どの変化のタイミングもワクワクしてきたし、ゼットンとグループになった今回の変化にも、ものすごく期待をしているんです。
鈴木:ゼットンも創業から27年の間、ずっと時代と共に変化を続けてきた企業です。人々が今の時代に何を求めているかを見極め、その都度新しくかたちにして提供してきたからこそ、今のゼットンがあります。変化を続けてきたアダストリアと、変化を続けてきたゼットン。我々がこれからどう変わっていけるかを考えると、私もすごく楽しみです。木村社長、これからどうぞよろしくお願いします!