社会福祉法人 北養会が運営する特別養護老人ホーム・救護施設「もくせい」の介護職員用ユニフォームを制作したアダストリア。前回の記事では、アダストリアの制作チームALCと「もくせい」のみなさまとの対談記事をご紹介しました。今回は、実際に現場で働くスタッフの方をゲストに迎え、新しいユニフォームの感想や、介護の現場で実際にあったファッションに関するエピソードなどを聞いていきます。
ユニフォームが完成するまでのエピソードを「もくせい」のみなさんと一緒に振り返りました。
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>「オーダーメイドのおしゃれな介護ユニフォームで、福祉業界にもっとワクワクを!」
Q.まずは、みなさんの自己紹介からお願いします!
安西:介護職員の安西です。新卒から「もくせい」に入社して今年で6年目になります。介護職を目指したきっかけは、中学生の頃に福祉をテーマにしたドラマを見たこと。そこで介護の仕事を知り、自分も目指そうと思いました。介護の知識があれば自分のプライベートでも役に立つと思ったし、年齢や地域を問わず働けるところも魅力的でしたね。
田中:同じく、介護職員の田中です。私は入社2年目で、まだまだ勉強中です。私が介護を目指したきっかけは、ひいおばあちゃんが通っていたデイサービスのスタッフさん。自宅では家族三人がかりで支えていたひいおばあちゃんを、そのスタッフさんは小柄なのに一人で支えていたんです。それを見て、すごく格好いいなと思い、介護の仕事に憧れを持つようになりました。
伊藤:「もくせい」施設長の伊藤です。介護業界で働いてもう20年ほど経ちます。僕が若い頃から、介護職のユニフォームと言えばポロシャツにチノパン。いくつかの施設で働いてきましたが、どこも同じような感じで・・・。強いて言えば、ポロシャツのカラーが違うぐらい。僕自身、ユニフォームに関してはずっと「おもしろくないな」と思っていました。だからこそ、今日二人が新しいユニフォームを着ている姿を見て、改めて「いいじゃん!」となりました。
Q.新しくなったユニフォームの感想を聞かせてください!
伊藤:実際に新しいユニフォームを着てみて、二人はどう?
安西:まず、かっこいい!落ちついたカラーだし、動きやすくていいなと思います。
田中:私も、最初に見た瞬間からかっこいい!って思いました。なんだか、医療現場の人がよく着ているスクラブっぽい雰囲気がありますよね。こんなユニフォームが着られるなんてイケテル!って思っちゃいます。友達にも「アダストリアにユニフォームをつくってもらえるんだ」と話したら、いいなって言われました。
安西:私、胸元にペン入れがあるのがすごく気に入っています。
田中:私もです!これ、すごくいいです。
安西:今までは必要なアイテムをすべてポケットにまとめて入れていたので、いつもパンパンだったんです。ものが落ちたりもするし……新しいユニフォームはポケットが大きくなった上に、ペンも別に入れられるから、すごくスッキリした感じがします。
伊藤:トップスはちょっとゆったりしたシルエットで、トレンド感もよく出ているよね。
田中:パンツは足もとがスッキリして見えるのもいいですよね。
安西:うんうん、シルエットすごくかっこいいです。あと、トップスは裾の背中部分の丈が長くなっているのも嬉しいですね。前のユニフォームだと、かがんだときに下着が見えたり、ポロシャツの生地が薄くて下着が透けやすかったりもしたので……これなら、かがんでも下着が見えにくいし、透けることもなさそうで。
伊藤:介護職は仕事中に服が濡れたりすることも多いけど、乾かす暇がないからそのまま放置しちゃいがちなんだよね。新しいユニフォームは速乾性のある「cotatto(コタット)」というアダストリアの独自素材を使ってもらっているから、「濡れたけどしょうがない、このままやり過ごそう」だったのが、「濡れたけどすぐに乾いた」みたいに、悩みの解消につながれば嬉しいなと思っています。
田中:ユニフォームは毎日洗濯するんですが、生地がくたびれた感じになってしまうのが私はがずっと悩みでした。でも、新しいユニフォームは生地がしっかりしているので、毎日洗ってもすぐにへたったりしなさそうだなって感じます。
伊藤:今回、ユニフォームの制作をアダストリアにお願いしていちばん良かったと思うのが、「ユニフォームでおしゃれしてもいいんだ」ということをみんなに伝えられたこと。これまではサイズの幅が狭くて同じユニフォームを着られないスタッフがいましたが、今回は全員が着られるように特注サイズもつくりました。本格的な導入はこれからなんですが、全員が同じユニフォームを着ることで、気持ちも高まってくれるといいなと期待しています。
Q.介護の現場で、ファッションの力を感じるのはどんなとき?
安西:私たちは毎日、ご利用者さまの入浴介助もしています。着替えをご用意するときは、クローゼットから一着だけ出すのではなく、何着か持って「どれにしますか?」と聞くようにしています。「選べる」って、ご本人にとっても嬉しいことなんですよね。あと、ちょっとしたことなんですが、クローゼットの手前のお洋服ばかり選んでしまうといつも同じ格好になってしまうので、なるべく後ろの方からお洋服を取るようにするなどして、少しでもファッションを楽しめるよう工夫しています。
田中:自宅からたくさんお洋服を持って来ている方って多いんです。自分で編んだ手作りのお洋服を見せてもらったこともあります。でも、「介助してもらうんだから、こういうかたちの服は避けた方がいいよね」と、私たちに遠慮している方は意外と多くて。もっとみなさまが、自分の好きなものを着て過ごしてもらうにはどうすればいいんだろう……と、はがゆい想いもあったりもします。
伊藤:二人とも、素晴らしいですね。僕が現場に出ていた頃は「ご本人に選んでもらう」まで考えが及んでいなかったように思います。引き出しの手前からしか着替えを取ってこなかったし、「どれを着ますか?」ではなく「これを着ましょう」と、こちらがすべて選んでしまっていました。だから、こういう風に考えてくれるスタッフが「もくせい」にいてくれることは、すごく嬉しいですね。
安西:着る物だけでなく、「どの飲み物にしますか?」とか、些細なことでもご本人の想いを大切にできるようなお声かけはいつも意識しています。あと、以前ご利用者さまの爪にマニキュアを塗ったときはすごく喜んでくださいましたよね。
伊藤:あれはすごく喜んでもらえたよね。
田中:「自分だったら」と考えると、やっぱり毎日同じ服を着るよりも、好きな服を着たいじゃないですか。私も安西さんと同じで、なるべくクローゼットのあるいろんな服を取り出すようにしていますが、以前、奥の方に眠っていたアイテムを出してお見せしたら「わ〜!こんなのあったね!」と喜んでくれて、そこからすごく会話が盛り上がったんです。そういう瞬間が仕事のやりがいにもつながっているので、どうすればご利用者さまにもっと喜んでもらえるかは、いつも意識するようにしています。
伊藤:ユニフォームが新しくなって僕たちが嬉しいと感じるのと同じように、だれだってファッションが変われば嬉しいんですよね。年齢問わず、おしゃれは人の心をすごく豊かにしてくれるんだなと改めて思います。
Q.アダストリアと一緒にやってみたいことを教えて!
伊藤:つい最近、仕事でネパールに行ってきたんですが、ご高齢の方がみなさんすごくおしゃれだったんですよ。たまたま、女性が井戸端会議みたいに街中で集まって話しているのを見かけたんですが、その様子がとてもカラフルで!きっと、それぞれ自分の着たい服、好きな色を選んでいるからなんでしょうね。すごく素敵でした。「もくせい」でも、ご利用者さまがもっと自分の好きなものを、遠慮せず着ていけるようにするにはどうすればいいか、アダストリアと一緒に考えていけたらいいですよね。
田中:私、専門学校時代にアダストリアの「Play fashion! for ALL」の活動についてお話を聞いたことがあるんです。そのとき印象的だったのが、「車いすユーザーのこだわりカジュアル」。車いすの方はタイヤで服がこすれて破れることがあるからと、肘あてをプラスして破れにくいようにしたり。ちゃんとおしゃれでかっこいいのに、福祉の面まできちんと考えられているファッションがあるんだと知って、すごく感動しました。そういうファッションがどんどんふえて欲しいなと思いますね。今回はユニフォームをつくってもらえましたが、今度はご利用者さまにどんな服がほしいかを聞いてつくってもらったりしても面白そう!
伊藤:高齢者の方は、どうしてもファッションを諦めてしまいがちです。でも、「昔からおしゃれが大好き」「本当はもっとおしゃれがしたい」という方はたくさんいるはず。遠慮したり諦めたりすることなく、もっと自分の好きなもの、着たいものを自由に選べるような環境を生み出していけたらと思いますね。
田中:もっと自由におしゃれを楽しんでもらえたら、私たちも嬉しいです!
伊藤:介護業界はネガティブな報道が出ることもありますが、多分、実際に働く僕たちと世間のみなさんのイメージってかなり違うと思うんです。僕たちの仕事は、「ご利用者さま本人が望む暮らしを支えていくこと」。それが叶ったときにご利用者さまが見せてくれる心からの笑顔が、本当に嬉しいんです。その笑顔をこれからもっと見ていけるように、ユニフォームに限らず、アダストリアともっといろんなことに挑戦できればいいなと思いますね。
Play fashion! for ALL
これまでの取り組みはこちらから
>すべての人が、ファッションを もっと楽しめる社会を創る。
>障がい×ファッション×アート すべての人が繋がる!グッドコミュニティイベント ~インクルーシブな社会の実現へ~
ALC/アダストリア・ライフスタイル・クリエイション
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