アダストリアではダイバーシティ&インクルージョン推進をしていく中で、「ADASTRIA DIVERSITY MEET UP」を実施しました。 2019年4月にはLGBTQ+の当事者の方とアダストリアのメンバーによる座談会イベントの第1回目のMEET UPを開催。その翌月には、アジア最大級のLGBTQ+の祭典「TOKYO RAINBOW PRIDE」に参加しました。今回は、2つの活動について振り返りつつ、「LGBTQ+の当事者の方々をサポートするために、私たちにできることは何か」を考えるパネルイベントを開催。そのレポートをお届けします。
※「LGBTQ+」とは、セクシュアル・マイノリティの総称として使われている言葉のひとつ。
L(レズビアン)は女性同性愛者、G(ゲイ)は男性同性愛者、B(バイセクシュアル)は両性愛者、T(トランスジェンダー)は主に身体的な性別と性自認が一致しない人、Q(クエスチョニング)は自分のセクシュアリティが分からない・意図的に決めていない・決まっていない人
イベントには、「LGBTQ+についてもっと知りたい」と、社内外から約40名もの人が参加してくれました。ファシリテーターは、前回の座談会イベントでも司会進行を務めてくれた、LGBTQ+をテーマにしたエンタメサイト「やる気あり美」の編集長・太田さんです。
「TOKYO RAINBOW PRIDE」
から伝わる、注目度の高さ。
まずは、アダストリアのダイバーシティを推進するCSR担当のメンバー2名が登壇し、「TOKYO RAINBOW PRIDE」が開催された当日の様子や、どんな人が参加してくれたのかについてレポートしてくれました。
「イベントは大盛況でした!参加者は20万人以上と、昨年より約5万人も増えていて、LGBTQ+に対する世間の注目度はますます高まっていると感じましたね」
「アダストリアでは、セクシュアル・マイノリティの方々を対象にしたカミングアウト・フォト・プロジェクト『OUT IN JAPAN』への衣装提供やスタイリングサポートの他、LGBTQ+の象徴として用いられるレインボーカラーをモチーフにしたオリジナルグッズの販売やワークショップを実施しました」
「今回のカミングアウト・フォト・プロジェクトでは、141組168名の方が参加してくれました。撮影をすること、カミングアウトすること、どちらに対しても緊張している方が多かったですね。でも、自分らしさを表現できるような衣装を一緒に選んだり、反対に、普段の自分のキャラクターからは絶対に選ばないような大胆な衣装を着たりと、思い思いの格好で撮影に臨むうちに、少しずつ自然な笑顔を見せてくれるんです。それが嬉しかったですね」
ダイバーシティの活動がさらに広まったり、新たな課題も見えてきたりと、「TOKYO RAINBOW PRIDE」への参加を通じて、さまざまな発見があったと話す2人。「来年もぜひ、イベントに出展したい」と笑顔で答えてくれました。
職場で感じた、
それぞれの違和感。
次は、座談会イベントに参加してくれたメンバーが登壇。LGBTQ+の当事者とアダストリアのメンバーによるトークがはじまります。
まずは、座談会のトークテーマだった「働くときに“受け入れられている”“受け入れられていない”と感じる瞬間」について振り返っていきます。
「あるとき私が職場の更衣室にいると、一緒になった相手が着替えてくれなかった、という話をしました。自分が受け入れられているかどうかって、言葉にしなくても空気感でなんとなくわかるんですよね」そう話すのは、トランスジェンダーの瞬さんです。
「LGBTQ+に関する知識を増やすことも重要だと思いますが、一番大事なのは、相手を思いやる気持ちを持つことだと思うんです。お互いに理解し合える空気をつくれば、もっとみんなが過ごしやすくなる……座談会では、そんな話をさせてもらいました」
トランスジェンダーの佑真さんは、アルバイト時代のエピソードについて振り返ってくれます。
「アルバイト先では“佑真”と名乗り、制服も男性向けのものを着ていました。でも、契約書類上の自分は本名である女性の名前なんですよね。あるとき、本部からアルバイト先に書類が送られてきて、みんなが『これ誰!?』と戸惑っていたことがあって。もし、トランスジェンダーだと公言していなければ、どうなっていたんだろう。きっと、もっと配慮できることがあるよね、という話をしました」
そしてアダストリアのメンバーも、座談会に参加して感じたことや、その後の心境の変化について話していきます。
「座談会でみなさんの話を聞いて、自分が思っていた以上に“男だから”“女だから”という言葉が日常的に使われていると気付かされました。例えば、職場で片付けをするときも、何となく、『男性は重たいもの』『女性は軽いもの』という話になるんですよね。もっと言い方を変えていかなきゃなと考えるようになりました」
「“〜だから”という話は、LGBTQ+に限った話ではないですよね。私は、『女性だから、結婚して主婦になればいいじゃん』と言われて違和感を持ったことがあります。その違和感って、みなさんの気持ちと少し似ているんじゃないかな」
「LGBTQ+に関するイベントに参加したと話すと、『ってことは……そうなの?』と聞かれたり、『っぽいもんね』などと笑いのネタにされたりするんです。その言葉に悪気がないのはわかるけど、モヤッとする部分はあって。でも、その体験を経て、もしかすると僕も無自覚に相手をモヤッとさせているかもしれないと考えるきっかけになりました」
「僕は座談会で、“自分の手の届く範囲の無関心をなくしたい”と話しました。でも、座談会の話を職場でしてみたものの、その場限りの関心で終わってしまうことが多くて……。もっと、その人自身の考え方が変わるきっかけになるような、共感や感動といった“感心”を持ってもらえるようになりたいと思います」
ファッションには、
自信につながるチカラがある。
話題が尽きない中、第二部が終了。メンバーを一部交代し、「お買い物をするときに“受け入れられている”“受け入れられていない”と感じる瞬間」について振り返っていきます。まずは、レズビアンのアオイさんから。
「接客はほんの数分のやり取りですが、それでも、本心って見えちゃうんです。ひそひそ声で話されたり、変な視線を向けられたり、突拍子もない質問をされたり……そういうお店は、『二度と来るか!』って思っちゃいます」
「もちろん、嬉しい!また来たい!と思う瞬間もあります。以前、当時付き合っていた彼女と一緒に買い物をしたとき、店員さんが『また2人で来てくださいね』と言ってくれたことがありました。女友達や家族同士などと勘違いされていたかもしれないけど、その一言がとっても嬉しくて。変に構えたり、影で話されたりするのではなく、結局は、普通に接してもらうのが一番なんですよね」
瞬さんは、レディースの服が着たいけど、勇気が出ない……そんな葛藤の最中にいたときのエピソードを話してくれました。
「昔はなかなかレディースのお洋服を着ることができませんでした。そんな私を変えてくれたのが、あるアパレルショップの店員さん。友達の付き添いでレディース向けのショップに入ったとき、隠れるようにやり過ごす私を見て、気付いたんでしょうね。その店員さんが私でも着られる商品をいくつか選んで試着室に入れてくれたんです。そのお洋服がとってもかわいくて、友達も似合っているよと言ってくれて。そして、その店員さんは、しばらく悩んでから『それ、アナタにあげる』と無料でお洋服をくれたんです」
それをきっかけに、少しずつ自分に自信がつくようになったという瞬さん。心あたたまるエピソードを聞いて、太田さんも登壇メンバーも、参加者のみなさんも感動した様子でした。
続いて、アダストリアのメンバーも、LGTBQ+の当事者である方々と話すことで改めて感じたこと、自分の中で変化したこと……さまざまな“気づき”について話していきます。
「相手のことをよく考えればできるはずの気遣いが、考えが至らず気遣えていない……という場面は意外と多いかもしれないですよね。僕はゲイだと社内でカミングアウトしていますが、トランスジェンダーの人と話す機会は今までほとんどなかったんです。今回イベントに参加したことを機に、もっと深く考えたり、言葉にして伝えたりしていきたいなと思いました」
「ある商業施設では、インフォメーションでトイレの場所を聞くと、相手の見た目に関わらず、男性用、女性用、多目的用……すべてのトイレの場所を教えてくれるという話を聞きました。これ、すごくいい取り組みだなと思って。アダストリアでは、重要書類の名前記載が通称名でもOKなんですが、会社としてもっともっといろんなことにチャレンジできればいいなと思いました」
そして最後に、佑真さんがある想いについて話してくれました。
「世間は“LGBTQ+への理解を深めよう”という流れができつつありますが、もっと時間が経てば、“LGBTQ+という言葉は必要ないくらいだよね”という流れになっていくと思うんです」
「LGBTQ+の人は左利きの人と同じ割合ぐらい存在します。でも、みなさん『私、左利きです』と誰かに言われても、違和感なんて感じないですよね。LGBTQ+も、そうなっていくはず。今日みたいに、当事者の話を聞く機会もいずれなくなると思うので、聞けてラッキーだったと感じてくれたらいいなと思います」
セクシュアル・マイノリティとして、
ファッションとどう向き合っているのか。
座談会イベントのレポートトークが終わり、いよいよ最後のテーマへ。ゲストのみなさんの“ファッションについて”の話で会場は盛り上がります。
この日、シンプルな色合いの服装だったアオイさんは、実は意外なファッション歴があるそうです。
「20代前半の頃は、普段着でハロウィンパーティに参加できるぐらい、派手なゴスロリファッションでした。当時の私にとって、ファッションは武装。そのままの自分の姿で社会と接触するのが怖かったんですよね」
ゴスロリファッションを卒業したきっかけは、人生でさまざまな経験を重ねていく中で、「自分はレズビアンとして生きていく」という覚悟が決まったときだったそうです。
一方、瞬さんは今の好きなファッションの話を。
「高身長を活かした服を着よう!ということで、ロングワンピをよく着ています。昔は、かわいい服を着る自信なんて全くありませんでした。でも、さっきのエピソードをきっかけに自分に自信が持てるになって、少しずつ、レディースの服が着られるようになったんです」
他にも、“学生時代にハマっていた、今考えるとちょっと恥ずかしいファッションの話”、“佑真さんがあえて女性的なファッションアイテムを取り入れている話”、“宇宙系からロハス系へと移り変わっていった太田さんのファッション遍歴”など、各々のファッションに対する想いを語る中、イベントは終了時間に……。
「アレもコレも、まだまだ話し足りない!」「聞き足りない!」という雰囲気の中、幕を閉じました。
- 「自分はアダストリアメンバーであり、LGBTQ+の当事者でもあります。今日いろんなお話を聞いて、自分はカミングアウトしてはいるけど、それでも無意識のうちに人と距離を取っているところがあるかもしれないと感じました。もっといろんなことや人に興味を持って、当事者としてできることを広めていきたいです」
- 「CSR担当としてLGBTQ+に関するイベントへの参加を推進していく中、社内のいろいろな人と接する機会があります。アダストリアは社員数が多い分、良くも悪くもいろいろな価値観が存在するなと実感することが多々あるんです。何事においても、誰に対しても、“決めつけないこと”。このことをいつも心に留めて活動したいと思います」
- 「今日、みなさんからお話を聞いて感じたのは、自分がイヤだなと思うことと、みなさんがイヤだと思っていることは意外と共通しているということでした。“一人の人間として”どう接するのがベストなのかを考えていきたいです」
- 「トークの中で出た“LGBTQ+という言葉すらなくなればいい”というセリフが印象的でした。今日ここで聞いたこと、感じたことをきっかけに、自分も何か行動に移していきたいですね。僕一人の力で社会を変えることは難しいけれど、自分の手の届く範囲の無関心をなくすことはできるはず。まずはそうやって、できることからチャレンジしていきます!」
みんなの考えた“今日から変えられること”をふせんに書いて貼り付けて、「グラフィックレコーディング」も見事完成!最後は全員で記念撮影を行い、イベントは終了です。